追窮
2008/08/19(Tue)

ぼんやりと考えていた。

この地上に立つ自分を確かめるように、意識を集中させようとする。
此処は私の場所ではない。
そんな想いがじわじわと拡がる。

「此処」というのは、現実的な場所というよりは、地球なんていう非常にワイドな空間の話で、実感を帯びないような話なのだ。
ただ、陽が昇り暮れてゆく自然の流れの中に在って、取り残されたような錯覚を持て余しながら、やはり此処は私の在るべき場所ではないと感じるのがやっとなんだろう。


そう遠くない日々に求めた海に還る自分を、瞳の奥でリプレイさせようとしている。
現時的な世界の中で、未だ還るべき場所を見つけられない私の瞳には、海の誘惑の方が甘美に思われる。
繋ぎ止めておく糸の頼りなさが時折恨めしくもあるけれど、それは仕方がないんだろう。
溜め息をつくことが多くなった。
言葉を飲み込もうと懸命になるあまり、押しとどめた言葉が悲しい吐息になって吐き出されてゆく。
どんな言葉を殺していったんだろう。
私にも判らない。


寂しさや孤独を嘆いた日々が遠くなり、私という小さな存在の在り方に追窮を向けると、そこには何もないように感じられる。
家という狭い空間の中、ぽっつりと佇んでいることが多くなった。
しなければいけないことが山積みで、けれどそこに私という存在はなくても滞りなく進んでゆく。
笑顔を上手く作ることが出来なくなってきた気がする。
笑っている自分を、どこかで嫌悪しながらも、私は本当に笑いたいのだと泣いている。


温もりを確かめようと伸ばした手を、寸前のところで下ろした私の手には何もなかった。
キラリと光るリングを、ただ愛しそうに撫でた貴方の姿だけが妙に鮮明に思い出された。
その切ない眼差しの中に、こんなもので引きとめようとする小さな悲しみを見つけて、大丈夫だと言ってあげられない寂しさと正直を憎んだ。

確かな愛の上に、何かが引っ掛かりのように覆いかぶさり、儚い愛は光をなくした植物のように小さく萎縮しているように思える。
けれど、それとはまた別に、私の内に随分以前からある自分への不信が、この世界から離脱を望んでいるのだとも思う。
ここにきて、海に還ろうとする意味を追窮しようとは思わないけれど、現実の肉体を捨てて、信じない魂なんてものもなく、私はただ海の中で漂うマリンスノーの輝きの一部になってゆけたらと思う。
亡骸が輝きを失う悲しみよりは、マリンスノーの一瞬の輝きが貴方を、そして誰かを傷つけることなく幸福に導くならと、ただ身勝手な想いを抱いている。


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