魅惑のシルクストッキングス
2007/02/22(Thu)
初春の湿り気のない爽やかな風が吹き始めた。
襟が立つほどの厳しい寒さが去ってゆき、日溜まりがはしゃぎ、人々の顔にも笑顔が灯りだし、心が理由もなく浮き足立つ。
庭先で春の訪れを知らせる沈丁花が咲き始めた。
清々しく甘い香りが、この日差しに似合っている。
花弁の小さなふくらみが無性に愛しい。
私はしばらく独りにしていた窓辺のチェアを引っ張りだすと、庭が見渡せるところに置いた。
そういえば、あのは良くこの窓からやってきた。


「こんにちは」
「やぁ」
「ステキなお庭ね」
「ありがとう。自慢出来るのはこのくらいでね」
「そう?あなたもステキよ」と、良い大人を程よくあしらって微笑するのだった。
ともすれば不健康そうな白い肌は、けれど少女の移りゆく妖艶な魅力の中に溶け込んで、微妙なる美しさだった。
それから少女は、どこからともなくこの庭先にやって来ては、しばらく私と遊んでいくようになった。

「ねぇ、この花はなんて言うの?」
「それは水仙だよ」
「きれい」
「あれは?」
「ん?あれは沈丁花」
「ジンチョウゲ?」
「綺麗だろう?いい香りがするよ」
「ホント!」

その横顔を見つめていると、懐かしい感覚がよみがえってくるのだった。
美しいものは美しいのだと。可愛いものは可愛いのだと。
ただ当たり前のことが、忘れかけていた私の心に、新鮮な風が浸透していくような爽快な気分だった。


その時もまた、少女の若さのように、清々しく芳しい沈丁花が咲き綻び始め、自然と私は少女の訪れを待ち侘びていた。

妖艶な美しさは色を増し、少女は見ているうちに成長してゆく。
過ぎていく時間の速さより、少女が大人へと変化してゆく速度の方が速く思われた。
「見てキレイでしょ?」と少女はある日、陽に満ちた庭で髪をかきあげでそう言った。
「イヤリング?」
「ピアスよ」
「ピアスか。きれいだね」
少女の白さに映える赤いルビーのピアスだった。
素足に赤いエナメルの靴を履いて、少女は少しずつこの庭先から遠ざかって行くのだった。


「ねぇ、先生。このお庭少しお手入れしないとね」
「あぁ、そうだね。少し世話をしないうちにこうだ」
「いつも先生が?」
「そうだよ、僕がしてるんだ」
「大変ね」
「女ほど大変でもないさ」
「あら、そんな大変な女性が好きだったの?」
「貴女くらいの時にはね?」
悪戯気な視線に屈託なく笑う少女の、ある種の快活さが私には心地良かった。



ある雨の日、私は珍しく家を長く空けて出かけていた。
しとしと静かな雨が降り、空は曇天の灰色で重たげであったが、庭の花々は久しぶりの雨を喜んでいるように見えた。
私も傘をさしながら、どこか気分が高揚していた。

夕方、用を終えて家路につくと、庭には一輪の美しい花が咲いていた。
見事な傘の花だった。

「待ってたの?」
すぐに振り向いた少女の腕の中には、一匹の子犬が抱かれている。
「うん。待ってたの。お昼に来たのだけどお留守で。先生、あんまりお出かけしないから、すぐに戻って来ると思って」
何とタイミングの悪い…。そう毒づいても仕方がない。

「その犬、拾ったの?」
「うん…」
小さな逡巡が、待っていた意味を教える。
「飼うの?」
「うん。飼いたい」
「飼いたい…か。飼えるの?」
沈黙をすぐに了解した私は、「僕はわりと淋しがり屋でね。良かったら僕にもらえないかな?」
少女はパッと顔を上げると、どこか複雑そうにけれど美しく微笑むのだった。

「ホント?飼ってくれる?」
「うん、いいよ。だけど僕は不器用でね、庭をいじったり、犬の世話をしたり、自分のことをしたりいろいろは出来なくてね」
「じゃぁ、私、毎日散歩に連れて行くから。ね?それならいいでしょ?」
少女のそんな必死さや、一途さが可愛らしかった。
「そうしてくれると有難いよ」
私はそんなことを言いながら、心から少女の訪れを待っていた。



そんな無邪気な少女も、可愛い子犬の成長が速いのと同じように、急速に大人への階段を登り、そして今は……。


「ねぇ、あなた?見て、キレイでしょ?」
「あぁ、綺麗だよ。でも僕は赤いのがいいよ」
「そう?」


エナメルの靴を脱ぎ捨て上質のスウェードの靴を履き、素足には艶を増すシルクストッキングを履いて、私を誘惑する。

「ねぇ、あなた?キレイな赤いお花があったの」
「あぁ、いいとも。買ってあげるよ」



私の妻はおねだり上手になった。



††††††††††

続き物にするつもりはなかったのだけど(笑)
まぁそれはさておき(笑)

10代の美しい美脚?には、可愛いサンダルに素足。なんても可愛いのでしょうが?(笑)
少し「私」を誘惑しなくちゃいけない「らしい」ので、少女は女になってゆくのでした。
「風船の悪戯」(何時ぞやのブログ参照、笑)あたりから、この怪しげな二人の関係が続いて来たのですが、とうとう結婚したんですね?(おいおい、作者でしょうが!笑)
まっ細かいことは気にしない♪
そういうことではなく。

カクテルの中に「シルクストッキングス」というカクテルがあります。
テキーラベースの、クレームド・カカオと生クリームが入っているため、その口当たりの良さから、シルクのよう。
というわけで、カクテルの怪しさも加わり、ちょっと雰囲気のある名前です。
確かに美味しい。
見た目が良く似たカクテルに、「アレキサンダー」というカクテルがありますが、あれも生クリームが入っていて、ベースがテキーラではなくブランデーです。
個人的には、アレキサンダーの方が好きかな?(笑)まぁ好みです♪
どのくらいメジャーかは分かりませんが、きっとバーでも通じるでしょう☆
一度機会があれば、どこかで飲んでみて下さい☆(甘いから食後がいいな♪デザートみたいで☆)

silkst.jpg

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