お掃除係
2007/10/24(Wed)
おはよう。
いってらっしゃい。
おかえり。

おやすみ。


おしゃべりだった私が、長い一日の中でおしゃべりすることと言えば、これからもエンドレスに交わされる4行の言葉。

特別な何かを話したいわけじゃない。
特別な楽しみがほしいわけじゃない。
特別でないその毎日の笑顔を見るために、私はどんな特別な努力をしなくちゃいけないの?

おかえりとおやすみの間に沈殿した言葉を、夜の帳に私はお掃除する。
もうそれは明日言えないから捨てようね?
もうそれは必要なさそうだから仕舞っておこうね?
もういいんだよ、全部。
捨てちゃおうね…。

そうすると朝が来て、眠ったはずの身体はどうしてか疲れていて。
あぁ、お掃除は大変だったんだ。だけど済んだんだねって思うことにする。

そうして、「おはよう」が始まる。
寂しい独りの一日が始まる。

誰よりもおしゃべりで、色んなことを伝えたかった。
そんな当たり前のように簡単だったはずのことが、今は酷くひどく遠く思われる…。
言葉が生まれなければ発する必要もないだろうに、言葉は次から次へと溢れ出て、伝える術がないままに圧縮されて鍵を閉めておくのが難しい。
パンパンになった焼き立てのポップコーンのようになって、ただそれは静かな涙にしかなれない。

「どうしたの?」って問い掛けに、この圧縮された分をどうやって説明すればいいんだろう?
毎日懸命に掃除した言葉や想いを、今度はどんな言葉で伝えられるというんだろう?
何でもない。と首を振る以外に。


窓の外に広がる乾燥した大地のように、私の心も涸れて喘いでいる。
そんな錯覚かもしれない。
だけど。そう思っても楽にはなれなかったよ…。
辛いのだと言葉に出来るほどには、私はまだ何かをし足りないんだろうか。
まだどんな特別な頑張りが足りない?
もう、分からないな。

お掃除係りはいつまでも替わってもらえず、放課後のもの侘しい風景のようにポツリと独りで佇んでいる。
「疲れたなぁ」って呟きながら。
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