私の本。
2008/04/04(Fri)


雑然とした部屋の中で、打ち捨てられた本。
読む人を失った悲しみさえも、埃を被ってくすんでいる。
哀しく途中に差し込まれた栞が、いつまでたっても進めずに泣いている。

主を失くした家の中に、また主を失くした物たちが溢れて、往き場所を探している。
必要だけれども、居場所のない物たちは、ただ袋の中に押し込まれてバイバイする。
それが永遠の別れだとか、全ての終わりだとか気付かずに。


ぽっつりと置かれたままの本を、切なげに取り上げてみる。
夢と幻想がつまった物語の中で、主人公たちがいまだに演じ続けている。
表紙がこすれて、穴が開いている。
寂しく隙間風が吹くこの世界にただひとつだけの、私の本。



帰ろう。
一緒に。
もう此処には居場所がないよ。
そう。
同じだね、私と。



懸命になる必要はないから、栞は捨ててあげよう。
いつもまっさら、1頁から…。
演じ続けることはないんだ、まだ幕は上がっていないから。
再び幕があがって、ゆっくりとのんびりと演じられる日が来るまで、お休み。



ぎこちない言葉の羅列だけが、今を哀しくさせている。
それはどんな美しい言葉も虚しくて、ひ弱で、敵わない。
埋めるものは時間以外になくて、それはとても遠い。

帰る場所がないと、もう喘いではいけないんだろう。
誰かを悲しくさせたり、誰かを傷付けるだけで。
無力な想いだけが、ちゃんと飛べずに落ちてゆく。
往く場所もなく佇んでいる言葉や、否定できない悲しみが蹲って沈黙している。



春の日差しの中、うららかな風とは裏腹に、秋の物悲しさのような想いを抱き、それもまた暖かな日差しに温められ消えてゆくのだろう…。


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