仕舞いきれない
2008/04/09(Wed)
言葉をどんなに羅列しても、真実はとても遠い。
伝えなければならないことや、思いがあって、その真意と現実にはいつも隔たりがある。

幸福や孤独。愛しさや疎ましさ。そんなものを一緒くたに曖昧な場所に納めておくことが出来るのも、
非常に限界がある。


本当(真実)にそれは難しいことなんだろうか?


生への喪失と、愛への不信が度重なって、空気を失って反響しない心の中には、いつも溜め込んで捨てられた言葉だけが、窮屈そうに鬱積している。
他人(ひと)にとって短慮なことだとしても、私自身の想いとしては正しい方向性へと向いている。


何が伝わったろう?
何が変化したろう?
何をしなければならないんだろう。
何かをしなくてはいけないというのに、互いに見つからない?



「愛や血縁によって縛られない生き方がある」  
と言った貴男の言葉だけが、とても寂しそうに、けれど正確な場所に留まっていて、今の私にはとても目障りな所で沈黙を続けている。

そんな生き方が出来ればいいと思って生きてきた。
家族とか、愛を忘れて、ただ自分のためだとエゴだけを繰り返して、人を傷付けてでも、好きな生き方を選んでいたいと思ったこともあったけれど、結局は中途半端なところで難しくて、逆にそれぞれを傷付けながら、同じように自分も傷付いていた。


不器用でもいい、愛のある生き方を。なんてことも思ったけれど、決して善人にはなりきれない残酷な自分と葛藤し続けているうちに、ずいぶん疲れてしまった。
正直な生き方をすればするほどに、醜悪な自分自身を残酷だと思ったり、また残酷の意味を問い哀しみを知った。


もしも今、そんな残酷や愛や血縁の束縛を捨てて、まるで宙に浮いた異質な存在になれるのだとして、そうしたら私の生はそこで止まって、周りにいるすべての人びとの時間だけは滞りなく進んでゆくのだとしたら、私は家中の荷物を片付け捨てて、消しきらない私を曖昧に残したまま、此処を去ってゆくんだろう。


寂しさを思って言葉をこうして紡ぐこともなければ、愛に苦しむこともない。
同時に幸福であることを否定する哀しみを、誰かに背負わせて取り残してゆくんだろう…。
それでもいい。と思えるくらいなら良かったのかもしれない。


引き出しの中に、溢れんばかりに詰め込まれた感情の一つ一つが飛び出したがっていて、それを無理矢理押し込んでおく力とか気力とか、あるいは覚悟とか、。そういったものを失いかけていて、私はただ泣きたがっていて、真実が辛辣であればあるほどに迷い続けていて、それは誰にも届かなくて。
伝えても届かなくて、届かなくて…。
諦めや脱力の底の方に、忘れたように丸まった愛が、とても悲しそうに俯いている。

ごめんね。

って言ったのは、貴方でもなく、私自身で…。


そんな言いようのない想いを抱えた時間が過ぎれば過ぎるほど、言葉がまさに無駄になってゆくように、私は健康と不健康という、非常に曖昧で忘却しがたい場所を行ったり来たりしながら、嘔吐と一緒に抱えきれない言葉を捨てて、空気を懸命に飲み込みながら、身体中から零れそうな悲しみを懸命に閉じ込める。



私は、其処にいる誰かに問い掛けているはずなのに、まるで透明人間のように誰もいない。
私はただ、残酷な正直を持て余しているに過ぎない。
けれど、聴くヒトを持たない。

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