客地の夜
2008/05/26(Mon)
何処に身を置いても、まるで客地のうら悲しさが、夜の静かな空気の中で、ささやかに膨張している。
言葉の不在が、まるで愛さえも不在の如く、辛辣に貫いている。


あるはずの故郷をなくしたような空白が、歳を重ねることの歪な愛の形だとしたら、それは何とも貧しいことか…。
新郷に佇んだ私は、わずかに見慣れたはずの山々の中に、懐かしむものをまだ見いだせない。
何処に行ってもお客の身は、宙に浮いた異物のように収まりが悪く、仕舞いきれない書類のように苛立たしい。

焦りではなく、喪失の繰り返しのようで、私のあるべき場所は、日々何かしら失われて消失している気がする。
私を凌駕する無意識の疎外感は、日常の営みを風化させてゆくような厳しさで突き刺し、陰を落としていく。

夜の冷たい空気に、溜め息だけが吸い込まれて霧散してゆく。
そうすると朝の光がまた、その空気を焼きながら消失させて、誰も知らない場所へと連れてゆく。
悲しみはこの場所に沈滞出来ずに悲鳴をあげて朝へと移りゆく。
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